2026年度 鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校 3学年

Alert for all~誰にでも届く防災情報システムを目指して~

Alert for all 〜誰にでも届く防災情報システムを目指して〜

鹿児島玉龍高校 2年6組 竹之下大和

要旨

本研究では、防災情報の「伝わり方」に着目し、音声・文字・光といった複数の情報手段を組み合わせること、さらに人を介した支援や地域のつながりを重視することで、誰にでも届く防災情報のあり方を探究した。福祉施設や特別支援学校へのインタビュー・アンケート調査、体験活動を通して得られた知見をもとに、機械だけに頼らない防災の新しい方向性を提案する。

1.序論

近年、世界各地で豪雨、台風、地震などの自然災害が頻発している。2018年時点では、世界の自然災害の発生件数は1980年ごろと比べて約4倍に増加しており、災害はもはや一部の地域や人に限られた特別な出来事ではなく、誰にでも起こりうる身近な問題となっている。

また、私が南日本新聞のオセモコ特派員として参加したHUG(避難所運営ゲーム)の経験で、私はリーダー役を務め、避難所に集まるさまざまな立場の人への対応を考える役割を担った。その中で、ご高齢の方や障がいのある方が来たとき、一人一人に配慮しながら迅速に判断することの難しさを強く実感した。この経験から、災害時には「情報が伝わるかどうか」が、その後の行動や安全に大きく影響するのではないかと考えるようになった。

視覚や聴覚、身体機能などに制約がある場合、テレビやスマートフォン、防災無線といった一般的な情報手段では、内容を正しく受け取れないことがある。本研究では、防災情報の「伝わり方」に着目し、年齢や障がいの有無にかかわらず、誰にでも防災情報が届く仕組みについて明らかにすることを目的とした。

以上の背景を踏まえ、本研究では特にご高齢の方と障がいのある方に対象を絞り、次のリサーチクエスチョンを設定した。

「ご高齢の方や障がいのある方に災害情報をスムーズに伝え、迅速に避難行動へ移すためには、どのような情報伝達手段が効果的か。」

この問いに対して、

「音声・文字・光を組み合わせた防災情報であれば、ご高齢の方や障がいのある方にも、今より早く、確実に情報が届くのではないか」

という仮説を立てた。

2.研究方法

本研究では、防災情報の伝達に関する課題を多角的に明らかにするため、以下の四つの方法を用いて調査を行った。

第一に、文献・統計資料調査である。近年の自然災害の発生件数や被害者の年齢構成、障がいの有無に関するデータを、政府機関や報道資料をもとに整理し、防災上の課題を客観的に把握した。

第二に、インタビュー調査である。ハザードマップ上で災害リスクが指摘されている地域に立地する福祉施設を対象に、災害時の情報伝達方法や避難体制について聞き取りを行った。

第三に、体験活動による調査である。福祉交流イベントにおいて、車いす・白杖体験を行い、当事者の視点から避難時の困難さを考察した。

第四に、アンケート調査である。特別支援学校を対象に、災害発生時の情報伝達手段や工夫点についてFAXによる質問紙調査を実施した。

これらの調査結果を比較・整理することで、防災情報の「伝わり方」に関する課題と有効な対応策を考察した。

3.結果

まず、災害時における被害の実態を調べた。近年の豪雨災害では、犠牲者の半数以上が65歳以上のご高齢の方であることが分かっている。また、東日本大震災や熊本地震では、死亡者の約2割が障がいのある方であったというデータもある。

これらの結果から、ご高齢の方や障がいのある方が、災害時に特に大きなリスクにさらされていることが明らかになった。その要因の一つとして、防災情報が十分に伝わっていない可能性が考えられる。

次に、その理由を探るため、ハザードマップで災害の危険性が示されていた地域に立地する二つの福祉施設にインタビューを行った。一つは鹿児島市犬迫町にある障がい者支援施設「つわぶきの里」、もう一つは下福元町にあるサービス付き高齢者向け住宅「サンコート慈遊館」である。

調査の結果、両施設ともハザードマップ上では危険性のある場所に位置していたものの、実際には比較的安全な立地であり、避難する側というよりも地域住民を受け入れる立場であることが分かった。また、災害時の情報伝達はLINEや電話など、人の手による連絡が中心であるという現状も明らかになった。

この調査から、特に危険なのは福祉施設に入所している人ではなく、地域で暮らしている中で支援者が近くにいない、一人暮らしや在宅時間の長いご高齢の方や障がいのある方ではないかと考えるようになった。

さらに、かんまちあで行われた「わくわく福祉交流フェア」にボランティアとして参加した際に、車いすや白杖の体験を行った。周囲の状況が分からない不安や、自由に動けないもどかしさを実感し、この状態で避難することの難しさを改めて感じた。

また、鹿児島聾学校と鹿児島盲学校にFAXでアンケート調査を行った。鹿児島聾学校では、デジタル掲示板や赤色灯など光による合図を使い、さらに教職員が手話やジェスチャーで状況を伝えていることが分かった。一方、鹿児島盲学校では校内放送や口頭での説明が中心で、「なぜ避難が必要なのか」「今どういう状況なのか」といった背景説明が不安の軽減に重要であることが分かった。

また、鹿児島盲学校ではiPhoneに標準搭載されている画面読み上げ機能「ボイスオーバー」が活用されており、視覚障がいのある方が自分一人でも情報を得るための重要な手段となっていることも明らかになった。

4.考察

これらの調査を通して、私自身の防災に対する考え方は大きく変化した。当初は、課題を解決するためには新しい機械や装置を開発することが必要だと考えていた。しかし、調査を重ねる中で、防災において本当に重要なのは「情報がどのように伝わるか」、そして「人と人との関係性」であると気づいた。

特に、聾学校や盲学校への調査を通して、障がいのある方々が受け身の存在ではなく、自ら状況を理解し、行動し、周囲を支える力を持っていることを学んだ。この気づきは、これまで自分の中にあった無意識の偏見を見直すきっかけとなった。

本研究によって、私は社会課題を一面的に捉えるのではなく、現場に足を運び、当事者の声を聞き、多様な立場から考える姿勢の重要性を学んだ。この姿勢は、今後大学で学問に取り組む上でも大きな基盤になると考えている。

そこで本研究では、①音声・文字・光を組み合わせた防災情報、②人を介したあたたかみのある情報伝達、③地域で顔見知りを増やす取り組み、の三つを組み合わせる防災のあり方を提案する。

5.結論

障がいのある方は、支えられるだけの存在ではない。実際に、停電で真っ暗になった避難所で、目の見えない人が周囲の人をトイレまで案内したという事例もある。人にはそれぞれ、できることとできないことがあり、その違いは災害時に「弱さ」ではなく「支え合う力」になり得る。

防災は、特別な機械や特別な人だけに任せるものではない。情報の形を工夫し、人を介した伝達を大切にし、地域のつながりを深めることで、誰もが防災の担い手になることができる。本研究を通して提案した「Alert for all」とは、誰かを守るためだけの仕組みではなく、誰もが誰かを支えられる社会をつくるための考え方である。

参考文献

社会応援ネットワーク『図解で分かる14歳からの自然災害と防災』太田出版、2022、p,80


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