2026年度 鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校 3学年

慢性疾患患者のQOLの改善と向上に関する研究

要旨

 近年日本では、高齢化が急速に進んでおり、国民医療費の約3割、死亡率の約6割を慢性疾患患者が占めている。私たちの身近でも病気によって生活を変えざるを得なかった人がいた。本研究では、高校生が高齢者の中で慢性疾患を抱えている方たちに対して自分たちが行うことができるQOLの改善と向上の方法について調査することを目的とした。48名の医療従事者を対象にアンケートを実施し、QOLの改善と向上の方法について考察した。また、考察したことをもとに身近な人に実施してもらい、家族との会話を重ねたことで自分(患者)の本意を明確にできたという結果を得られた。本研究は、病気を抱えながらでも自分の生きがいを見つけ、生きることへの価値観を見出すことができる可能性を示唆している。

1.序論

 近年少子高齢化が進む一方で、高齢期において何らかの持病を抱えてしまうことは、生物学的に見て否めない側面がある。それに伴い、自身のQOLの改善や向上が難しく生きがいや自分を見失っている人がいることが現実だ。そこで、QOLを改善・向上するための策を考察し、社会全体で高齢者を支えられるようにすることは、これからの日本の福祉を支えることに直結する。

 

2.研究方法

 本研究では、48名の医療従事者を対象にアンケート調査を行い、書籍や論文から必要な情報を収集した。(患者へのアンケートはプライバシー保護の観点から不可)

〈アンケート内容〉

・患者の家族との会話の有無

・患者の精神的なサポートを行っているかの有無とサポート内容

・患者が周囲のサポートを必要としているかの有無

・患者の持病に対しての向き合い方

・患者への寄り添い方

・生活の変化に対する対応方法

また書籍や論文を読み、まとめた。そして、アンケートの回答や書籍や論文をもとに、QOLを改善・向上させるための策を練った。

・アドバンス・ケア・プラニング(以下ACP)を実行する

・新しいことに挑戦し、自分の趣味を見つける

・家族内で認知行動療法(CBT)を実践する

・小さな目標を立て、一緒に実行する

今回の研究では、上記の内「ACPを実行する」と「新しいことに挑戦し、自分の趣味を見つける」の2つについて検証を行った。

3.結果

 医療従事者へのアンケート調査の結果、患者の家族と頻繁に話すかという問いに対し、あると回答した人が63.8%、ないと回答した人が36.6%という結果を得られた。また、患者に対して精神的なサポートをしているかという問いに対し、行っていると回答した人が85.1%、行っていないと回答した人が14.8%という結果が得られた。二つのグラフから、患者の家族と頻繁に話す人は、精神的なサポートをしているということが分かった。精神的なサポートの具体的な内容では、傾聴するという回答が大多数であったが、受容や患者と繰り返し反し合うといった意見を得られた。医療従事者の立場から患者を見ると、病気に対する不安や恐怖を抱いているのではといった回答が多かった半面、自分がいなくなることで家族の生活も変わってしまうといった回答も見受けられた。慢性疾患ということもあり、長期的な治療や生活の変化に対して、家族を含めた話し合いや人と比べずに自分なりの生活をしていくことが重要であるという結果が得られた。

 またACPを実践したことで、自分の今後についてきちんと家族と相談することができただけでなく、自分がこれから何を大切にして生きたいのか、どのようにして生きていきたいのかを明確にすることができたという検証結果を得られた。そして、自分が夢中になれるものを発見し、毎日の楽しみを得ることができたといった結果も得られた。

4.考察

 結果から、患者が家族と一緒になってきちんと病気に向き合うことで、自分のことを見つめ直す機会が得られることを示した。ただし、患者本人が持病について受け入れることができた場合であり、どうしても受け入れがたい患者への対応は、同じようにはいかない可能性があると考えられる。誰もが自分の今後について見つめ直し、やりたいこと、大切にしたいことは何なのかを考えられるような策を講じることが必要である。また家族単位だけでなく、地域とも交流することで自分らしさについてヒントを得られるのではないかと考えられる。

5.結論

 本研究では、患者が将来について考える上で、自分の本意に気付かされ共有することで、自分が大切にしたいことが明らかになる可能性を示した。今後は患者がより生きやすい環境を整えるために、患者一人一人に合った策を見つけ出し、研究することが望まれる。また患者だけでなく、その家族もサポートできるような策を考察することで、より患者のQOLが改善・向上させられるだけでなく、精神的な面でも改善される部分があると考えられるため、より視野を広くした策を練ることが今後の課題である。慢性疾患の患者だけの対策だけでなく、障碍者も含めた広い目で策を練ることも今後研究する上で望ましい。

6.参考文献

『シリーズ生命倫理学』 第8巻『高齢者・難病患者・障害者の医療福祉』丸善出版

『シリーズ生命倫理学』第15巻「高齢者・難病患者・障碍者の医療福祉」丸善出版

宮﨑博士『ACP支援のシステムを構築した慢性疾患看護専門看護師の思考と実践』

古川佳子、青木早苗 、瀬戸奈津子「慢性疾患とともに生きる患者にとっての“Positive living”の概念分析」『日本看護科学会誌』44 巻 p. 297-307 2024年

若村智子、尾関晴美、中西恵子、飯田和代、今西恵美子、善積三保、近田敬子「性疾患患者の行動変容の過程 --感知感覚への接近--」『京都大学医療技術短期大学部紀要』12巻p.15-22 1992年

髙田明美「慢性疾患におけるセルフマネジメント実践・継続とResponse shift現象のプロセスと特徴に関する質的研究」「日本保健医療行動科学会・年報編集委員会編」27巻 p.140-156 2012年

米倉佑貴「成人慢性疾患患者対象の自己管理支援プログラム 「慢性疾患セルフマネジメントプログラム」の効果-国内外の研究結果から」

鈴木伸一、巣黒慎太郎、近藤真前、澤田梢、中村菜々子、金外淑「慢性疾患患者のQOLの改善に活かす認知行動療法の実践」『認知療法研究』8 (2), 199-209, 2015-07

論文サイト CiNii Research - 国立情報学研究所


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