2026年度 鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校 3学年

探究テーマ
プロスポーツ選手との交流が小学生の運動への意識に及ぼす影響
―鹿児島ユナイテッドFCと清和小学校の連携事例―
①テーマ設定の背景
近年、鹿児島県の小学生は全国平均と比べて体力テストの結果が低い傾向にあり、とくに長座体前屈の記録が課題として挙げられている。長座体前屈は柔軟性を測る指標であり、けがの予防や運動能力の基礎に関わる重要な要素である。
本研究では、地域スポーツチームとの連携が、児童の運動への意識や取り組み方にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。具体的には、鹿児島ユナイテッドFCの選手が清和小学校を訪問し、サッカーボールの寄贈と講話を行った取り組みに着目し、その前後での運動への取り組み方の変化を調査した。
②仮説
研究の問いは「地域のスポーツチームと連携することで、児童の運動への意識や行動に変化は見られるのか」である。
仮説として、プロスポーツ選手との直接的な関わりは、児童にとって憧れや目標となり、運動に対する意欲を高めることで、日常的な運動への参加意識が向上すると考えた。
③調査方法
調査は、鹿児島ユナイテッドFCの山口選手が清和小学校を訪問した後、教員を対象にアンケートを実施する方法で行った。アンケートでは、来校前後での児童の運動への取り組みの変化や、寄贈されたサッカーボールの活用状況について自由記述を含めて回答してもらった。
④結果・分析
本研究では、教員および児童を対象としたアンケート調査を行った。教員アンケートからは、「運動に積極的に参加するようになった」「体育を楽しめるような活動を意識するようになった」といった肯定的な変化が報告された。一方で、「目に見える変化はなかった」という意見もあり、全ての児童に一様な変化が見られたわけではないことが分かった。
次に、児童アンケートの結果について分析する。休み時間の過ごし方については、「必ず外で遊ぶ」「たまに友達に誘われたら遊びに行く」と回答した児童が全体の約7割を占めており、多くの児童が日常的に体を動かしていることが分かった。一方で、「あまり外には出たくない」「絶対に外からは出たくない」と回答した児童も一定数存在し、運動に消極的な児童への働きかけが課題であることが明らかになった。
また、鹿児島ユナイテッドFCの山口選手の来校については、多くの児童が来校を覚えており、講話を通して「運動への意識が上がった」と回答した児童が多数見られた。自由記述からは、「楽しかった」「もっと運動したいと思った」「サッカーに興味を持った」といった前向きな意見が多く、プロスポーツ選手との直接的な交流が児童の意識に影響を与えたことがうかがえる。
一方で、寄贈されたサッカーボールの活用状況については、「実際に使ったことがある」と回答した児童は少数であり、「使ったことがない」「どれが贈られたボールか分からない」といった回答が多かった。このことから、来校による意識の変化が必ずしも日常的な運動行動の変化には直結していない現状も明らかになった。
さらに、鹿児島ユナイテッドFCの試合観戦経験については、来校前は試合を観戦したことがない児童が大多数であったが、来校後には「見に行った」「見に行きたいと思った」と回答した児童が増加しており、学校での取り組みが地域スポーツへの関心を広げる可能性も示された。
⑤まとめ
調査結果から、プロスポーツ選手との交流は、特に運動に関心のある児童やサッカーに親しんでいる児童に対して高い効果をもたらす可能性があると考えられる。憧れの存在と直接関わる経験は、運動を身近で前向きなものとして捉えるきっかけになる。
しかし、ボールが十分に活用されていない事例があることから、単発の訪問だけでは継続的な運動習慣の形成には限界があるとも言える。今後は、授業への計画的な導入や、柔軟性向上を意識した運動プログラムと組み合わせることで、長座体前屈の記録向上につながる可能性が高まると考えられる。
⑥残論点・今後の課題
本研究から、地域スポーツチームとの連携は、児童の運動への意識を高める一つの有効な手段であることが示唆された。一方で、実際の体力向上につなげるためには、継続的な取り組みと学校側の工夫が不可欠である。
今後の課題として、長座体前屈の数値変化を直接測定する調査や、連携を継続的に行った場合の効果を検証する必要がある。