2026年度 鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校 3学年

発表論文

※PDF版も添付しています。

別紙資料はアンケート結果の詳細です。

(配布等はしなくて結構です。)

SAF

― 持続可能な航空燃料の普及に向けて ―

 

 

鹿児島玉龍高校 2年 野口 礼登 2025年1月22日

  

 

要旨

近年、移動制限の緩和により航空需要が増加する中で、環境負荷を低減する「SAF(持続可能な航空燃料)」普及の重要性が高まっている。本探究では、SAFの普及に向けた技術的・制度的課題をSDGsの観点から探究した。文献調査や高校生を対象としたアンケートの結果、SAFの認知度は極めて低く、原料となる廃食油の回収体制も不十分である実態が明らかとなった。SAFは廃食油等から精製可能で温室効果ガスの排出を大幅に抑制できるが、国内における精製施設の不足と燃料価格の高さが普及の大きな障壁となっている。これに対し本探究では、政府による施設建設への補助金拡充や、自治体と連携した家庭用廃食油の定期回収システムの構築を提案する。また、教育現場において課題の解決・普及方法を深く議論することが、将来を担う世代の意識改革に繋がると考察した。SAFの普及は化石燃料依存からの脱却を促し、グローバル化の進展と地球温暖化対策を両立させる効果的な手段である。

研究の背景

近年、新型コロナウイルスによる移動制限が緩和され、グローバル化の進展とともに、国内外の旅行客数はコロナ禍前よりも増加している。これは観光業や航空業を含む日本経済の活性化につながる一方で、移動手段から排出される温室効果ガスの増加によって地球温暖化がさらに深刻化する懸念がある。

私は環境負荷を低減できる航空燃料「SAF」の存在に注目した。しかし、まだSAFは世界的に普及していない。

そこで本研究では、SAFを日本に今以上に普及させていくためには、どのような技術・制度が必要なのかを探究し、「地球環境の保護」を中心とし、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から探究を進めていく。

仮説

① SAFの普及が進まないのは国内で生産できる施設や量に限りがあることや、価格が通常の燃料より高額であり、政府がSAFの製造施設やSAF本体に補助金や様々な支援を行えば普及が進むと思う。

② 利用者がSAFの存在に気づき、「環境に優しいのなら、多少高額でも使ってもいいだろう。」と思うことで、利用が促進されるだろう。

調査方法

    文献調査(各航空会社のSAF導入事例・国土交通省やIATAICAOの公的資料)

    玉龍高校2年生にアンケートを実施しSAFはどのくらいの知名度があり、どのような条件下だったら使用してもよいかを尋ねる。

SAFとは何か

SAFはSustainable aviation fuel(持続可能な航空燃料)の略称であり、現在主に使用されている航空燃料と比較して温室効果ガス排出量が約60%から80%ほど削減できる現在注目されている新燃料である。

さらに、精製方法も各家庭から排出される廃食油から水素や二酸化炭素など様々な材料から精製可能である。しかし、2022年現在世界全体で生成されているSAFの量は年間約30万㎘(航空燃料の世界消費量の約0.1%)ほどであり今後さらに精製量を増やしていかなければならない。

SAFがなぜこれほどまでに環境に良いのかという仕組みについては、SAFを使用した航空機が排出した温室効果ガスがSAFの材料ともなる樹木などで吸収され再生産されるため地上のCO2 が増加しない。という仕組みである。(図1参照)

また、近年スーパーマーケットなどで廃食油回収ボックスを設置している店舗が増えており、今後さらなるSAFの増産が期待されている。

図 1

SAFによる環境サイクル

なぜ今SAFの普及が必要なのか

現在グローバル化が進み、人々は世界を股にかけて移動している。(表1参照)

近年、CO2排出量は年々急増している。世界の二酸化炭素の排出量の内、航空分野が占める割合は全体の約2.6%であり、他の主な交通手段に比べて自動車の次に多い。(表2参照)そのため、もし航空機がSAFを使用し温室効果ガス排出量を減らすことが可能であれば他の方法よりも強く地球温暖化の進行抑制につながる。(表3参照)

そのうえ、以前記したようにSAFは各家庭から排出される廃食油などから精製可能なため「環境に優しい」「ゴミの排出量が減らせる」という主に2つの観点から無駄がない効率的な燃料ともいえる。

表 1

航空機の年間旅客数予測(2023年現在)

ACI Worlds)

表 2

各交通手段別の二酸化炭素排出量

(国土交通省)

表 3

SAFと他の方法との環境負荷の違い

(経済産業省)

アンケート

対象と質問内容

対象

高校2年生

理由:高校生はこれからの未来を担っていく世代であり、今のうちにSAFや環境問題について知っておくことで将来より役立つ世代であるため。

使用フォーム

Googleフォーム

解答人数

24人

アンケート実施方法

Instagramのストーリーズから回答

質問内容(一部抜粋)

今回のアンケートでは主に以下の4つに分けて実施した。

① SAFという言葉を聞いたことがあるか。

② 廃食油回収ボックスを見たことがあるか。

③ SAFの使用による航空券の値上げを許容できるか。

④SAFが普及しない理由として何が大きいと思うか。

結果

→「はい」と回答した人数は想定していた人数(10%程度)よりは知っていた人が多かったがまだまだ認知度が低い燃料ということが改めて分かった。

→廃食油回収ボックスは自分の体感ではほぼすべての店舗に設置されていると感じていたが、意外にも設置している店舗は少なく、そのことも原料不足の一因だと読み取れた。

→一部の人は環境対策に対して値上げは許容できないため、価格を抑制しなければならないことが読み取れる。

→認知度がまだ低いことが普及していないことが、最大の要因だということが分かったうえで、SNSなどのメディアで現行の燃料の枯渇の危機について示し、SAFの存在の重要性をアピールすれば普及の手助けとなると考えた。

考察

上記のアンケート結果からまだ多くの高校生には「SAF」という言葉は浸透していないことが分かった。それは、メディアにあまり触れられていない話題であるとともにスーパーマーケットに廃食油回収ボックスが浸透していないことを示している。廃食油回収ボックスを知っていたとしても利用率を上げなければSAF普及に向けての解決には至らない。廃食油回収ボックスの利用率が上がらない理由には廃食油をスーパーマーケットに持っていくと、「なぜ持ってきているのだろう」と周囲の視線を集めるかもしれないから恥ずかしいという不安や「廃食油を集める意味が分からない」というSAFの存在を知らないが故の理由が隠されていると思う。そのような問題を解決するには廃食油の回収場所をスーパーマーケットなどの民間だけでなく自治体と協力し、普段のゴミ回収に「廃食油」の日を設定することで回収量も大幅に増加すると思う。しかし、それだけでは材料が増えたとしても増産にはつながらない。また、現在日本にあるSAFの精製施設は一か所のみである。そのため日本を飛行する航空機に対する航空燃料をSAFに置き換えられる量を精製することは到底不可能である。そのため、民間の力だけでなく政府も精製施設建設向けて今以上に前向きになり補助金制度などを充実させていく必要がある。

結論・提案

まだSAFは多くの高校生に知られていない。精製量を増加させるためにまずは知ってもらうことが大切である。学校では環境問題について考える授業があったとしてもその問題自体の解決策を考えるだけで終了し、考えた解決策をどのように普及・浸透させていくかを考えないことが多い。そのため、将来を担う世代が受ける学校の授業ではさらにもう一歩踏み込んで、普及方法などを考えていくことでSAFやバイオ燃料の普及に限らず他にもある多くの課題の解決加速や認知度上昇につながる。

現在SAFは多く使用されている石油や天然ガスなどと違い場所に左右されずどこでも精製することが可能である。精製施設が増加することで今まで化石燃料の輸入に使用していた莫大な資金を削減することも可能となる。大きく言えば、日本も世界に先駆けてSAFビジネスを展開することができれば現在停滞している経済の上昇の兆しとなるかもしれない。

現在世界はグローバル化が進行している。そのためには人々が世界を股にかけて移動することが必要である。そのようなグローバル化進行のために切っても切り離せないのは移動手段、特に航空機である。その航空機の燃料の環境負荷自体を軽減されることが可能であればグローバル化を止めずに、地球温暖化対策が可能となる。

以上のアンケート結果・文献調査等から本研究の仮説①②は一定の妥当性があると言える。

これから私はSAF普及のために可能な限り廃食油回収ボックスを利用していきたい。末筆となるが本調査に協力した方々にお礼申し上げる。

参考文献

ACI Worlds. ACI World Airport Traffic Forecasts 20232052. IATA.

https://store.aci.aero/wp-content/uploads/2024/02/WATF-Executive-Summary.pdf

HATCH. 航空分野におけるCO2削減の取り組み 新技術開発や持続可能な燃料導入とは. SHIZEN ENERGY. 2023.04.20

https://shizen-hatch.net/2023/03/15/airplanes-with-high-environmental-impact/

資源エネルギー庁.飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?. 経済産業省 2024.09.19

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/saf.html

環境. 運輸部門における二酸化炭素排出量. 国土交通省 令和7年10月2日

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

国土交通省.「SAF(サフ)」

https://www.mlit.go.jp/koku/pdf/saf.pdf

CN2燃料の普及を考える会. 図解でわかるカーボンニュートラル燃料~脱炭素を実現する新バイオ燃料技術~. 技術評論社. 2022年6月3日

アーサー・ディ・リトル・ジャパン. カーボンニュートラル燃料のすべて. 日経BP. 2023年6月19日


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