インクルーシブな学校環境の構築
これまでの学校生活で、友だちとの関係や授業中の雰囲気で、なんとなく居心地が悪いと感じることがありました。
こうした心理的な違和感は、毎日少しずつ積み重なると、学校生活への安心感を弱めてしまうことがあると思います。
学校は本来、誰でも自分らしく学び、成長できる場所だと思います。
しかし実際には、無意識のうちに周りに気をつかい、自分の気持ちや意見を言いにくい場面も少なくありません。
こうした小さな心理的負担は、自分でも気づきにくく、他人からも見えにくいと感じます。
だからこそ、学校として意識的に環境を整えることが大切だと考えます。
そこで今回の研究では、こうした「見えにくい心理的負担」を明らかにし、誰でも自然体でいられる学校環境をつくるためには、どのような工夫が必要かを探ってみました。
本校の1年生から3年生までの生徒を対象に、アンケートを実施しました。
質問は、心理的な孤立感や居心地の悪さ、意見を自由に言えるかどうか、学校にどのような改善を求めたいか、など多角的に設定しました。
自由記述も含めて答えてもらい、数字だけでは見えない心理的な側面も把握できるようにしました。
アンケートの結果、「学校で心理的にひとりぼっちだと感じることがありますか?」という質問では、思わないと答えた生徒が多かったものの、3分の1以上の生徒が「よくある、たまにある」と答えました。
特に、授業中に意見を言う時や行事・グループ活動の中で居心地の悪さを感じやすいことがわかりました。
「少し居心地が悪い」と感じる理由としては、「空気を読まなければならない」「自分の意見を言いにくい」という心理的負担が一定数見られました。
また、多くの生徒ははっきりとした理由は言えないものの、無意識の同調圧力や人間関係への配慮が心理的負担となっていることがわかりました。こうしたことから、心理的孤立は個人の問題ではなく、環境との関わりで生まれることがあると考えられます。
今回の仮説として、授業中や学校生活の中で、生徒の意見が否定されずに受け止められたり、周囲の雰囲気が穏やかで安心できると感じるほど、生徒は気をつかわずに自分の考えや気持ちを表現しやすくなり、それが心理的な安心感の向上につながるのではないかと考えました。
これは、自由記述で表れていた「意見を言えていると表面的には思うけれど、心の中では負担を抱えている」という生徒の声とも関連しています。
「自分の気持ちや意見を自由に言えると思いますか?」という質問では、大半の生徒が「そう思う」「まあまあそう思う」と答えていました。しかし自由記述では、表面的には自由に意見を言えていると感じている生徒でも、心の中では心理的負担や孤独感を抱えていることがわかりました。
「学校の心理的な面で改善すべきだと思いますか?」という質問では、多くの生徒が「いいえ」と答えていました。
理由としては、学校生活が楽しいからという前向きな意見と、心理的な問題は個人の問題で学校がどうこうできるものではない、という諦めの意見がありました。
特に、高校3年生に多く見られた「諦め型」の答えは、学年が上がるにつれて心理的負担を内面化しやすくなることを示していると思います。
アンケート結果からわかったことは、見えない心理的負担を抱える生徒が一定数いるということです。
集団活動の中で孤立を感じたり、無意識に周りに合わせることでストレスを抱える生徒は、学校に改善を求めること自体をあきらめている傾向がありました。
制度やルールを整えるだけではなく、心理的に安心できる環境や人間関係の工夫が必要だと思います。
例えば、クラスで少人数グループを作って意見を話す時間を設けたり、違和感や悩みを言いやすいアンケートや相談の機会をもっと増やしたりすることです。
具体的には、定期的に実施される面談時や日々の会話を通し、生徒の抱える小さな違和感を言葉にしやすい環境をつくり、担任の先生がサポートできる体制を整えることが大切だと思います。
またアンケートでも見られた、カウンセリングを受けやすい環境づくりも必要だと考えます。
こうした取り組みにより、生徒は安心して自分の意見や気持ちを表現できるようになり、心理的な安心感が強まると考えられます。
今回の研究では、生徒の心理的孤立や居心地の悪さの実態をアンケートで明らかにしました。
結果として、多くの生徒は表面的には自由に意見を言えていると感じていますが、心の中では無意識のプレッシャーや孤独感を抱えており、学校がそれに気づかないままになっていることがわかりました。
だからこそ、誰もが自然体でいられる包括的な学校環境を作るためには、見えにくい心理的負担に注目して環境を工夫することが欠かせません。今後は、こうした環境づくりの具体的な方法について、さらに研究や実践を進めていくことが大切だと思います。