鹿児島ソウルアイテム開発プロジェクト ~伝統工芸を生かした鹿児島の新たな一歩~
私たちの研究は、「鹿児島に新しいソウルアイテムを作る」ことを目的として行った探究活動である。
私たちがソウルアイテムというものをテーマにした理由は鹿児島の魅力を自分たちの手で生み出してみたいと考えたためだ。そのため私たちの研究の根底には強い意志がある。それは「鹿児島を愛している」ということだ。愛する鹿児島に私たちができることは何だろうかと考えたとき、それは新しい一歩を踏み出すことであると気づいた。私たちは単に鹿児島に住んでいるから鹿児島県民である、ということはない。毎日桜島を見てかっこいいなと思うからこそ鹿児島県民なのだ。週末家族と一緒に温泉へ出かけて退屈を忘れるからこそ鹿児島県民であるのだ。鹿児島の食材がいっぱい詰まったご飯を地元のテレビでも見ながらゆっくり味わっているからこそ鹿児島県民なのだ。私たちの身の回りにある私たちを鹿児島県民たらしめるたくさんの魅力に一つに、「ソウルアイテム」が加わり、それぞれの県民の人生がさらに豊かになってほしいという目標を立て私たちは研究を始めた。
ソウルアイテムとは、その地域らしさを象徴し、人々の記憶や誇りと結びつく存在である。私たちはまず、他県のソウルアイテムの事例を調査し、長く愛されるためには「地域の歴史や文化性」「日常生活との結びつき」「世代を超えて共有される要素」が重要であると考えた。
これを踏まえ、鹿児島を代表する伝統工芸である薩摩切子に着目した。玉龍高校生に向けて私たちが実施した伝統工芸品に関するアンケートでは、薩摩切子が最もなじみ深いと答えた生徒が全体の5割を超えて最多の割合となった。高い技術力と独特の文様、美しい色合いを持つ薩摩切子は私たちの生活でなじみやすいものであったことがわかる。しかし日常生活で実際に薩摩切子という存在を感じる機会が少ないという課題があると私たちは考えた。薩摩切子をただ知っているだけでは非常にもったいないと考え、私たちは、薩摩切子はソウルアイテム製作の絶好の資源になると考え、新たな形で鹿児島の魅力を伝える方法を探った。
検討の結果、学校制服のボタンに薩摩切子の文様をモチーフとしたデザインを取り入れるというアイデアに至った。制服は多くの人が長期間使用し、思い出と結びつきやすいものであるため、ソウルアイテムとしての条件を満たしていると考えた。
制服に取り入れることが決まり私たちは、制服会社の方に私たちのアイデアについて意見をいただいた。お話の中で実際に今まで制服や体操服に薩摩切子や大島紬の文様を取り入れている学校があるということが分かった。しかし、制服のボタンに取り入れることでより身近なものにしようというアイデアは今までなかったので良いものが出来上がりそうだというアドバイスもいただくことができた。
次に、具体的なデザイン作成に取り組んだ。その過程で、実際に薩摩切子職人の方々に話を伺い、薩摩切子ならではの特徴について学んだ。特に印象的だったのは、文様の組み合わせによって印象が大きく変化する点や、色被せガラスによる美しいグラデーション表現である。これらの特徴を生かし、複数の文様を組み合わせたデザインや、色合いに変化を持たせた案を作成した。
現在は、完成したデザインを制服会社に提出し、実物を制作した上でアンケート調査を行うことを計画している。使用感やデザインへの評価を分析することで、より多くの人に受け入れられる改良を行いたいと考えている。
本研究を通して、伝統工芸は形を変えることで新たな価値を生み出せることを学んだ。それは鹿児島の新たな魅力の創出にも必ずつながると分かった。将来的には、この制服ボタンのデザインが鹿児島県内に広く普及し、薩摩切子を知らなかった人々にもその魅力が伝わることを期待している。そして、このアイテムが多くの人にとって鹿児島の思い出と結びつき、「鹿児島は魅力ある街だ」と感じてもらえる存在になることを目指したい。