幼児期の運動遊びと認知機能の関係性
幼児期の運動遊びと認知機能の関係性について ~才能がグングン伸びる環境って?〜
鹿児島玉龍高等学校 2年4組 棈野葵 2年5組 石澤菜乃 2026年1月
近年、幼児期の運動遊びが子どもの成長に与える影響が注目されている一方で、どのような遊びがその力を引き出すのかは十分に明らかにされていない。
幼児期から小学校以前の時期にかけて、同じ学校・同じ学年で学んでいても、学力に差が生じることが多い。身近な友人との学力差を感じ、「この差はどこから生まれるのか」という疑問をもったことが、本探究のきっかけである。
学力差は努力量や学習時間の違いだけでなく、幼児期の経験や環境が影響している可能性があると考えた。特に幼児期の運動遊びは、認知機能の発達に関係するとされている。
認知機能は非常に幅広い概念であり、そのすべてを調べることは難しい。そこで本研究では、これからの社会において多くの企業が求める人材像に共通して重視されている力に着目した。具体的には、忍耐力・適応力・挑戦力の三つに焦点を当て、それらがどのように育まれるのかについて調べることにした。
1. 教育方針の違う幼稚園によって異なる活動とその効果について
2.運動遊びの種類による比較調査
3.教員へのインタビュー調査
4. 研究内容からの遊びの提案
1.教育方針の違う幼稚園によって異なる活動とその効果について
①ひまわり幼稚園(モンテッソーリ教育)
実施していること:
個別に取り組む机上活動が行われていた。「きりがみパターン」と呼ばれる教材を用い、子どもが色紙を切り、模様を完成させる活動が実施されていた。教材は個人別に整理されていた。
また、幾何学的な図形を用いた作品が壁面に掲示されており、同一テーマの活動が継続して行われていた。教室内には、生活行動に関する掲示物や、絵本、パズル、地球儀などの教具が常設されていた。
②どんぐり自然学校(シュタイナー教育)
実施していること:
自然素材を用いた制作活動や、絵を描く・形をつくるといった表現活動が日常的に行われている。色や形を感じながら作業する活動が多く、完成まで同じ活動に継続して取り組む時間が設けられている。
また、季節に合わせた行事や歌、リズム遊びが取り入れられており、体を動かしながら一定の流れを繰り返す活動が実施されている。
教室内には、装飾の少ない落ち着いた環境が整えられ、絵本や手仕事の教材が常設されている。
③伊敷幼稚園
園内にプールが設置されており、夏季には水遊びやプール活動が実施されている。また、行事や制作活動では季節ごとの変化を意識した取り組みが行われており、年間を通して季節感を大切にした活動が見られる。
さらに、SI遊びと呼ばれる活動が取り入れられており、子どもが課題に取り組みながら考える遊びが実施されている。
2.運動遊びの種類による比較調査
幼稚園では、制作遊びや運動遊び、生活体験など、園の方針によってさまざまな活動が行われている。
しかし、活動内容の違いだけに注目すると、子どもの成長につながる本質を見落としてしまう可能性がある。そこで本研究では、各幼稚園で行われている遊びを活動名ではなく、その中に含まれる要素や子どもの経験という観点から分析した。
その結果、切る・折るといった制作活動、月見団子づくりなどのクッキング遊び、SI遊びに代表される感覚統合遊びなど、活動の種類が異なっていても、子どもの成長につながる遊びには共通する特徴があることが分かった。
伸びる遊びには、すぐに成功しない場面が意図的に含まれており、子どもは失敗や試行錯誤を経験しながら活動に取り組んでいる。
このような「すぐにうまくいかない状況」の中で、子どもは方法や力加減、動きを自分で調整しなければ先に進むことができない。
この経験は、環境や状況に応じて自らを変える力、すなわち適応力の育成につながる。
また、完成までに時間がかかる活動に取り組み続けることは、結果が出るまで粘り強く向き合う忍耐力を養うと考えられる。
さらに、これらの遊びでは、活動に取り組むかどうか、あるいは再挑戦するかどうかを子ども自身が選択している点が重要である
大人に与えられた課題をこなすのではなく、自分の意思で一歩踏み出す経験が、挑戦力の基盤となっている。
以上の分析から、本研究では、伸びる遊びを「子どもがすぐに答えを得られない状況の中で、自ら試行錯誤し、調整と再挑戦を繰り返すことができる遊び」と定義する。
この定義は、特定の教育法に依存するものではなく、幼稚園教育全体に共通して当てはまる視点であると考える。
3.教員へのインタビュー調査
まず、「園でよく取り入れている運動遊びは何か」という質問に対して、教諭からは鬼ごっこ、リレー、ボール遊び、平均台、跳び箱などが挙げられた。これらの運動遊びは、園児が楽しみながら体を動かすことができ、集団活動としても個人活動としても取り入れやすいという理由から、日常的に実施されているとのことであった。
次に、「年齢によって運動遊びの内容をどのように変えているか」という質問に対しては、低年齢のクラスではルールが単純で成功体験を得やすい遊びを中心に行い、年齢が上がるにつれてルールを複雑にしたり、難易度の高い運動を取り入れたりしているという回答が得られた。特に年長児では、自分で考えて行動する場面を増やすよう意識していることが分かった。
最後に、「運動遊びを通して、忍耐力・適応力・挑戦力・言葉の理解の変化を感じることはあるか」という質問に対して、教諭は「ある」と回答した。具体的には、繰り返し運動遊びを行うことで、失敗しても諦めずに挑戦する姿や、ルール変更にも柔軟に対応できるようになる様子が見られるとのことであった。また、遊びの中で教師や友達の説明を聞く機会が増えることで、言葉の理解が深まり、指示を正確に理解して行動できる園児が増えているという意見も得られた。本研究では、幼稚園ごとに異なる活動内容に注目するのではなく、それらを要素に分解することで、子どもの成長につながる遊びの共通点を明らかにした。その結果、伸びる遊びには共通して、「すぐにうまくいかない状況があること」「子ども自身が方法や順番を選ぶこと」「失敗してもやり直すことが許されていること」といった要素が含まれていることが分かった。
これらの要素は、忍耐力・適応力・挑戦力の育成に深く関わっていると考えられる。
4.研究内容からの遊びの提案
この共通点を踏まえ、本研究では「つくって・えらんで・やり直す 室内ミッション遊び」を提案する。
この遊びは、子どもが自らミッションを選び、道具やコースを作り、実際に挑戦しながら、うまくいかなかった点を自分で修正し再挑戦することを特徴としている。活動の中で、子どもはすぐに答えを与えられるのではなく、試行錯誤を通して状況に応じた調整を行う必要があるため、忍耐力や適応力が自然に引き出される。また、再挑戦するかどうかを自分で決める経験は、挑戦力の基盤となる。
さらに、この遊びは特別な設備を必要とせず、室内環境で実施できるため、天候や季節に左右されず継続的に行うことが可能である。以上のことから、
「つくって・えらんで・やり直す 室内ミッション遊び」
は、幼稚園において共通して見られた「伸びる遊びの要素」を意図的に取り入れた実践的な提案であり、幼児期の非認知能力を育てる有効な活動であると考えられる。