2025年度 長崎県立諫早高等学校 3学年

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探究テーマ

ディスクにかかる重力がぶんぶんゴマの影響に及ぼす影響について

テーマ設定の背景

ぶんぶんゴマとは、回転するもの(以下、ディスク)とそれを引く紐で構成されたおもちゃである。以前ぶんぶんゴマを見たとき、コマの回転運動と手の並進運動が相互変換する複雑な機構だと思い興味を持った。また、その後調べてみると人力で回る機構としては高速な回転を生み出せるということもわかり、面白そうだと思った。情報を調べたところ既にいくつかの先行研究があり、主に3つの先行研究を調べたところ、ディスクにかかる重力がぶんぶんゴマの影響に与える影響についてはまだ明らかになっていないことが分かり、この影響について自分で調べたいと思った。さらに社会的な研究意義として、ディスクにかかる重力の影響について調べることは、この機構をより大規模な装置に応用する際に有用であると考えられる。

仮説

ディスクにかかる重力が増すほどディスクが回りにくくなる

ディスクにかかる重力が大きいとその分紐を引く力がディスクを支える力に使われるため回りにくくなると考えた。

「回りにくさ」を「同じ周期でディスクを回転させたときの一周期当たりの力積、すなわち回転中に両端から紐が引く平均の力」と定義した。

調査方法

面密度の異なる3つの素材(銅, アクリル, 紙)を用いて、それぞれの半径を変えることで慣性モーメント(回転運動での回転のしにくさを決定する物理量)が等しく質量が異なる3枚のディスクを作成した。

ディスクの穴の中心からの距離は全て0.5cmとし、紐にはリヨセル糸18番手3コードのものを使用した。

紐が捩じれていない状態のときに紐の端から端までが30センチメートルになるよう長さを調整した。

一定の周期で張力をかけたり緩めたりするため、一つ目の先行研究と同様にモーターを用いて紐を引く装置を作成し、回転角φ、引く力Fを記録した。

また、先行研究からの新規性として、重力による紐のたわみの影響を計測するため、ディスクの回転軸の高さの最大値からの変位yを新たに計測した。

計測方法にはカメラで撮影した映像を用い、動力計や高さ目盛りの値を読み取った。

φは、紐を2色に塗り分け畝の数を数えることで映像から巻き数を計測した。

結果・分析

各値について、それぞれの条件の実験から回転10回転分の平均値を記録した。

実験前の想定では先行研究と同様に回転角φ、角速度φ'、角加速度φ''を求める予定だったが、カメラからの映像では1周期刻みのデータしか取れず、時間変化について考察することが難しかったため最大値のみを計測した。

同様の理由で、縦方向の変位yも最大値のみを計測した。

以下のグラフで示す力については、回転5回目と6回目の、動力計で計測できた部分をプロットしている。

mとφ、ymaxの関係ををそれぞれグラフにしたものが右図。それぞれ横軸がm、縦軸が各値となっている。

質量mが大きいほど、φmaxが大きく、ymaxが小さくなっていることがわかる。実験前の予想では、mが大きくなるほど重力の影響で紐がよりたわみより回転しにくくなる、すなわちφmaxが小さくymaxが大きくなると考えていたため、予想に反する結果となった。

Fの時間変化を表したグラフが右図。横軸が時間t、縦軸がF。回転角の絶対値が最大になった点を橙色で、最小になった点を黄色でマークしている。

グラフの概形から、Fが周期的な変化を繰り返している様子がわかる。また、どのグラフも山が2つある特徴的な形をしてるが、これは紐を引くモーターの運動とぶんぶんゴマの運動のタイミングの差によりこのような形になっていると考えられる。

さらに、このグラフのデータがある部分だけから一周期分の面積、すなわち一周期分の力積を算出し、それぞれ周期で割って平均の力を出したところ右図のようになった。

mが大きくなるほど平均の力Faveが大きくなっており、仮説通りの結果となったといえる。理由として、ディスクを回転させる力に加えて、ディスクを支える力が大きくなることが考えられる。

このように、一応は仮説通りの結果が得られた。しかしmによって少しTが異なっていたため、今回の実験は必ずしも条件を完全に揃えられたとは言いにくいものになってしまった。

実験前の予想では、モーターに負荷がかかりモーターの回転が遅れても、mが異なることによる重力の差は紐の張力と比べて小さいため各ディスク間での周期の差は無視し得るほど小さくなると考えていた。

ディスクの慣性モーメント、引く装置が等しいにもかかわらず、このような周期の差が出てしまった理由として、空気抵抗の影響が考えられる。

円盤が中心周りの回転をする際、空気抵抗によって生まれる抗力トルクは半径の5乗に依存するため、銅から紙へと半径が大きくなると抵抗力が増し、ディスクを回りにくくするような影響がより強く働いてしまった結果、紙のほうがモーターにかかる負荷が大きくなってしまったことが考えられる。

このことはF-tグラフからも推察できる。上図で示したようにF-tグラフには2つの山が見られるが、銅では1つ目の山にピークが、紙では2つ目の山にピークが見られ、アクリルではその中間のような形をしている。ここから、空気抵抗によって紙のほうがより回りにくくなり、モーターの運動に対して他よりも遅れて運動していたために後半にピークが来たと考えられる。

さらに、この空気抵抗の影響により紙のほうが最大の運動エネルギーが小さくなり、φmaxが小さくなるとともに、運動の遅れによってモーターが紐を緩めるのに対して紐が巻き取られるのが遅れた結果ymaxが大きくなったと考えられる。

まとめ

実験から「ディスクにかかる重力が増すほどディスクが回りにくくなる」という仮説はおおむね支持されたが、

誤差要因を排除し、より定量的な分析を行うためにはさらなる改善が必要である

残論点・今後の課題

主に3つの改善点が挙げられた。

①モーターへの負荷の差によりディスク間で周期を揃えられなかった点

→実験ごとにギア比を変えるなどして周期を調節できるようにする、もしくは人力での回転にしたい。

②着色により紐の曲げ剛性が変わってしまった点・動画からのデータ採取では時間変化が読み取れなかった点

→先行研究同様レーザーを使用するなどして、よりデータの量子化の幅やサンプリング周期を小さくして計測したい。

③サンプル数が少なかった点・ディスクの面積によって空気抵抗に差が出てしまった点

→異種素材間での面密度の違いによる質量の調整から、ディスクの構造を工夫することによって連続的に質量を調整できるようにし、なおかつ空気抵抗に対する流体力学的な特性をそろえたディスクの作成方法を用いたい。

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