2026年度 広島文教大学附属高等学校 3学年

探究テーマ
「聞こえにくい」を乗り越える授業づくり -生徒と教師2つの目線から-
①テーマ設定の背景
人より聴覚が弱く、雑音があると音が聞き取れないことがよくある。日常では、何度も相手に聞き返してしまったり、授業で先生が何を言ってるのか聞き取れないことがある。そんな中、私の周りにいる友達は、私に配慮をしてくれて、大きな声で話してくれたり、話す前に名前を呼ぶことで気づかせてくれる。
そんな優しい配慮、「バリアフリー」が当たり前になり、誰でも生きやすい世の中を作るために自分は何ができるかを、教育的場面(授業)に絞って考えるべく、探究活動としてこのテーマを設定した。
②仮説
まず私は、「耳が聞こえにくい人も、そうでない人も関係なく、みんなが授業を受けやすい教育環境」を目指している。
どうすれば目指す教育環境に近づけるか。そのために自分は何ができるか。
何か特別な機器や専門知識がなくても、バリアフリーは自分たちの言動で実現できると思う。
はじめに、教師が実現できそうなバリアフリーとして4つの仮説を考えた。
1つ目:「話す前に見せる」(例)流れを板書、キーワードを先出しなど
2つ目:「重要なことは必ず文字で残す」(例)重要なとこは色を変える、板書は消す前に撮影okにするなど
3つ目:「話し方の工夫」(例)早口にしない、板書しながら話さないなど
4つ目:「音環境を意識する」(例)雑音がある時は一度止まる、発言を復唱するなど
次に、生徒が実現できそうなバリアフリーとして3つの仮説を考えた。
1つ目:「発言の仕方を工夫する」(例)発言する時は立つ、手を挙げてから話すなど
2つ目:「雑音を作らない意識」(例)私語を減らす、机や椅子を必要以上に鳴らさないなど
3つ目:「聞き返し・確認を当たり前にする」(例)要点をまとめて確認、聞き取れなかったら正直に言うなど
③調査方法
調査方法①
自分が目指す教育環境と現状を比較するべく、
「文教高校の現状」(授業で聞こえにくいと不便を感じることはあるか、それはどんな場面かなど)について調査する。
マイクロソフトフォームズでアンケートを作成し答えてもらう。
調査方法②
立てた仮説を試すべく、論理表現の授業を使って自分のクラスを対象に調査する。
授業前に意識して実践してほしいことを伝え、授業中も確認できるよう黒板にも意識するポイントを書かせてもらった。
立てた仮説を実際にそれぞれの立場で実践してもらい、「前より聞こえやすく授業を受けやすい」と言う結果になったら立てた仮説は成功だ。
④結果・分析
調査方法①
「目指す教育環境」と「文教高校の現状」の比較
調査結果①
⑴ 授業を受けていて聞こえにくいと感じたことはあるか
あると答えた人が33%、ないと答えた人が67%
この結果から、普段聴覚に対して不便なく過ごせる人たちでも3割以上の人が授業で不便を感じているということがわかる。
つまり今の教育環境は、聴覚において障がいの有無関係なしに、不便なく授業を受けられる環境じゃないということだ。
⑵ ⑴あると答えた人は、それはどんな場面だったか
・授業中の発表やペアワークの場面でその人が声も小さくて早口言葉で何を話しているのか全くわからない。
・後ろの席だったから聞こえにくかった。
・黒板に向かって喋っている時
・周囲が騒がしい時
・複数の人が一斉に話しかけてきた時
・先生の声が低かったり小さかったり滑舌が悪い時。
↓アンケートで多く出たキーワードをまとめたもの

この結果から、環境要因より、人的要因が多いことがわかる。環境を変えるのは難しいが、人的要因は自分たちの意識で改善することができる。
つまり人的要因を改善し、教育環境が良くなれば、聴覚の障がいの有無関係なしに、不便なく授業を受けられるということだ。
一部の人が受けにくく、一部の人は受けられる授業ではなく、みんなが不便なく授業を受けられるためには自分たちの行動を変え、教育環境をより良く改
善する必要があるとわかった。
調査①によって、人的要因について立てた仮説を立証する価値はあると断定できる。
調査方法②
立てた仮説を実際に授業で実施
〈教師が実現できそうなバリアフリー〉
①話す前に見せる
②重要なことは必ず文字に残す
③黒板を書きながら話さない
④後ろの席に届いてるか確認
〈生徒が実現できそうなバリアフリー〉
①発言する時は立つ
②私語を減らす
③誰かが話している時は集中
④聞き取れなかったら聞き返す
→「前より聞こえやすく授業を受けやすい」と言う結果になったら立てた仮説は成功。
調査結果②
『いつもより不便さが少なくなった人が多数!』
『前より授業が受けやすくなった人が増加』
〈教師が実現できそうなバリアフリー〉
①話す前に見せる
→キーワードを色変えてわかりやすくすることで、
これからどこを意識してワークを解けばいいのかが目で確認できてわかりやすい。
②重要なことは必ず文字に残す
→「ここが大事」と口で言うだけでなく、同時にアンダーラインや黒板で指示することで、
声では聞き逃した人も目でもう一度再確認できる
③黒板を書きながら話さない
→黒板を書く音と被ってうまく聞き取れなかったり、
反対側を向いて話すから表情が見えなくなることが無くなった。
④後ろの席に届いてるか確認
→定期的に「聞こえてる?ついてこれてる?」と確認することで、
生徒が遅れて焦ることもないし、もし聞こえなかった時に言いやすい雰囲気ができる。
〈生徒が実現できそうなバリアフリー〉
①発言する時は立つ
→今誰が発言しているのかが教師も生徒もすぐわかる。
②私語を減らす
→話している人以外の声がないと、
雑音がないため声がクリアに聞こえるから聞き取りやすい。
③誰かが話している時は集中
→集中することで、私語が減ったり一人一人の発言に反応を示せるから発言者も安心できる。
④聞き取れなかったら聞き返す
→聞き返すことが当たり前の環境をつくることで
聞こえなくても聞き返しやすいし、聞き返すことでより理解して覚えられる。
アンケート結果からわかるように、1人1人が意識するだけでいつもよりはるかに授業が受けやすくなったとわかった。
耳が聞こえにくい自分も、調査を実施した授業はいつもに比べ不便なく授業を受けられた。
環境ではなくまずは人的要因を変えるだけでもバリアフリーは実現できると調査②でわかった。
⑤まとめ
「耳が聞こえにくい人も、そうでない人も関係なく、みんなが授業を受けやすい教育環境」は実現できる!
まずは一人一人の意識を変えることで教育環境が変わり、バリアフリーが自然な世の中になっていくと思う。
⑥残論点・今後の課題
もっと違う条件で調査②を実施することで、より正確で信憑性の高い結果になると思う。
〈例〉・他科目の授業で実施する
・席を変えて実施する
・大講義室や体育館など場所を変えて実施する など